エンディングノートの書き方──おひとりさまが本当に書くべき5つのこと

目次

「いつか書こう」と思い続けて、10年が過ぎた

終活について調べていると、必ずといっていいほど目にする言葉があります。

「まずはエンディングノートから始めましょう」

書店に行けば、可愛らしい表紙のノートが何種類も並んでいます。100円ショップにも置いてある。自治体が無料で配布しているところもある。

でも、実際に「書き終えた」という方に、私はほとんど出会ったことがありません。

25年間、警視庁専門の葬儀社として5万件以上の現場に携わってきた中で気づいたことがあります。エンディングノートが書けない理由は、「面倒だから」でも「考えたくないから」でもない。

「何を書けばいいのか、本当にわからない」

それだけなのです。

市販のエンディングノートは「記入欄」が多すぎます。預金口座、保険証券、不動産情報、趣味、ペットの世話、デジタルパスワード……。全部埋めようとすると、それはもう「ライフログの完成版」を求められているような気分になる。途中で力尽きて、引き出しの奥にしまい込む。そのまま数年が過ぎる。

おひとりさまに必要なのは、「完璧なエンディングノート」ではありません。

「私が死んだとき、困らないための最低限の地図」

それだけでいい。今日は、おひとりさまが本当に書くべき5つのことをお伝えします。

「いつか書こう」と思ったまま、引き出しの奥で眠っているノートが、日本中にある。

おひとりさまのエンディングノートが、一般的なものと違う理由

最初に、一つ大切なことをお伝えしなければなりません。

おひとりさまのエンディングノートは、家族がいる方のそれとは、根本的に目的が違います。

家族がいる場合、エンディングノートは「家族への補足情報」です。何かあれば家族が動き、調べ、判断してくれる。ノートはその助けになれば十分。

でも、おひとりさまの場合、ノートを読む相手は「あなたのことをほとんど知らない人」かもしれません。死後事務を委任した専門家、遠縁の親戚、あるいは行政の担当者。

その人たちが、あなたの意思を正確に実行できるように書く。これがおひとりさまのエンディングノートの本質です。

だから、「書き漏れ」より「書く相手を意識しない」ことの方が、ずっと危険なのです。

おひとりさまが本当に書くべき5つのこと

1. 緊急連絡先と「最初に動く人」を明記する

あなたが突然倒れたとき、病院から連絡を受けるのは誰ですか?

この一点が曖昧なまま、エンディングノートに他の情報を書き込んでも、そのノートに辿り着く人がいなければ意味をなしません。

書くべきことは、シンプルです。

  • 緊急時に最初に連絡する人(名前・続柄・電話番号)
  • その人が対応できない場合の次の連絡先
  • 「このノートの存在」を知っている人は誰か

「頼れる家族がいない」という方こそ、ここを最初に書いてください。死後事務委任契約を結んでいる場合は、受任者の連絡先をここに記します。契約書のコピーの保管場所も一緒に。

2. 葬儀・埋葬についての希望(費用感を含めて)

現場で最も多く見てきた「後悔」のひとつが、故人の葬儀について何も聞いていなかったという遺族・関係者の戸惑いです。

「本当はどんなお別れを望んでいたんだろう」

その答えが何もないまま、実務だけが進んでいく。おひとりさまの場合、この問いに答えてくれる家族がいないことも多い。

だからこそ、あなた自身の言葉で残してください。

  • 葬儀の規模(家族葬・直葬・一般葬など)
  • 宗教・宗旨(無宗教でも「無宗教希望」と明記する)
  • 埋葬の希望(墓・樹木葬・散骨・永代供養など)
  • 葬儀・埋葬に使っていい概算の費用

費用の話は後回しにされがちですが、これが一番大切かもしれません。葬儀社に「お気持ちで」と言われたとき、判断基準がなければ関係者は困ります。「50万円以内で」「できるだけシンプルに」という一言が、執行者を助けます。

葬儀費用をあらかじめ信託口座に預ける「葬儀信託」を利用されている方は、信託の概要と信託会社の連絡先も合わせて記しておきましょう。

「どんなお別れを望んでいたのか」──その答えを残せるのは、あなただけです。

3. 財産の全体像(金額より「在り処」を)

エンディングノートに「預金残高」を書く必要はありません。金額は変動するし、書いたことで空き巣や詐欺のリスクが生じる可能性もある。

書くべきは「財産の在り処(ありか)」です。

  • 取引している金融機関名と支店名(口座番号は任意)
  • 加入している生命保険・損害保険の会社名と証券番号の保管場所
  • 不動産を所有している場合、その所在地と権利証の保管場所
  • 借金・ローンがある場合は、その概要

おひとりさまで相続人がいない場合、財産は最終的に国庫に帰属することになります。しかし、遺言書で「遺贈寄付」を指定することもできます。そうした希望がある場合は、「遺言書を作成済み」「公証役場で公正証書遺言を作成した(〇〇公証役場、〇〇年〇月)」と一言添えておくだけで、関係者の動きがまったく変わります。

4. デジタル情報の整理(パスワードより「解約リスト」を)

スマートフォン、SNS、サブスクリプションサービス。現代のおひとりさまの生活には、デジタルの痕跡が無数に残ります。

パスワードをそのままノートに書くことはセキュリティ上お勧めしません。ただし、以下の情報は必ず残しておいてください。

  • スマートフォンのロック解除方法(PINコードの保管場所)
  • メインで使っているメールアドレス
  • 月額課金されているサービスの一覧(Netflix、Amazonなど)
  • SNSアカウントの扱い(削除してほしい、追悼アカウントにしてほしいなど)

月額料金が死後も引き落とされ続けるケースは、現場でも珍しくありません。「解約リスト」を残すことは、あなたの財産を守ることでもあります。

5. あなたの「物語」──なぜ、そう望むのか

これが一番大切で、そして一番書かれていないものです。

「散骨を希望します」

この一文があっても、なぜ散骨を望むのかが書かれていないと、執行者は不安になります。本当にそれでいいのか、と。

あなたが終活で選んだことには、必ず理由があるはずです。

「海が好きで、ずっと海の近くで生きてきたから」
「誰かの負担になりたくないから、シンプルでいい」
「宗教に関わりなく、静かに眠りたい」

その言葉があるだけで、執行者は迷わず動けます。そして、あなたの人生を知らなかった人でさえ、あなたという人間の輪郭を感じることができる。

エンディングノートは「記録」ではなく「手紙」です。

読む相手に向けて、あなたの声で書いてください。

エンディングノートは記録ではなく、あなたの声で書く「次の人への手紙」。

書き方のポイント:「完成」させなくていい

エンディングノートは、一度書いたら終わりではありません。

状況が変われば、書き直す。新しい口座を作れば追記する。気持ちが変われば、上書きしていい。

大切なのは、「今のあなたの意思」が残っていること

まず、今日この5つのうち「1. 緊急連絡先」だけでも書いてみてください。それだけで、あなたのもしものときに関わる人の負担は、確実に減ります。

まとめ:エンディングノートは、自分への約束より「次の人」への地図

おひとりさまのエンディングノートに必要な5つのことを振り返ります。

  1. 緊急連絡先と「最初に動く人」──ノートに辿り着く入口を作る
  2. 葬儀・埋葬の希望と費用感──最後の選択をあなたの言葉で残す
  3. 財産の「在り処」──金額より場所と種類を
  4. デジタル情報の整理──「解約リスト」だけでも必ず
  5. あなたの「物語」──なぜそう望むのか、一言でいい

「そろそろ」では、エンディングノートの書き方についても、無料相談でお話しすることができます。「何を書けばいいかわからない」「誰に何を頼めばいいか整理したい」という段階から、一緒に考えます。

死後事務委任や葬儀信託など、ノートに書いた意思を確実に実行するための仕組みについても、ご相談ください。

「死に方は選べなくても、送られ方は選べる」

その選択を、あなたの言葉で残すお手伝いを、私たちはしています。

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