「献体したから、葬祭費はもらえない」——そう思い込んでいませんか?

実は、献体をされたご遺族でも、その後に偲ぶ会やお別れ会を行った場合、健康保険の葬祭費(5〜7万円)が支給される可能性があります。

この記事では、実際に献体後のお別れ会で葬祭費が支給されたケースをもとに、申請の条件や手順をご案内します。

目次

献体後、「葬儀をしていない」という思い込み

故人の意思が、医学の未来へと続いている

献体とは、医学の発展のために、亡くなった後のご遺体を大学の解剖実習に提供することです。

献体された場合、ご遺体は大学にお預けする形になり、火葬は大学側が行います。ご遺族が直接、搬送や火葬を手配することはありません。

そのため、多くのご遺族がこう思われます。

「うちは葬儀をしていないから、葬祭費の対象にはならないだろう」

大学からもそうした説明はありません。ホテルでお別れ会を開いたとしても、それが「葬祭」にあたるとは、普通は考えません。

ここに、大きな見落としがあります。

偲ぶ会・お別れ会も「葬祭」に該当する場合がある

祭壇がなくても、故人を偲ぶ場は作れる

葬祭費は、国民健康保険法に基づき、被保険者が亡くなった際に「葬祭を行った方」に支給される給付金です。

ここでいう「葬祭」は、一般的な通夜・告別式だけを指すわけではありません。

自治体によっては、偲ぶ会やお別れ会——たとえご親族だけの小さな食事会であっても——それが故人を弔う目的で行われたものであれば、「葬祭」として認められるケースがあります。

実際に、岡山市の公式サイトでは、献体の場合について次のように案内されています。

「献体のときは、仮葬儀やお別れの会、偲ぶ会の会場となった場所の領収書で申請が可能」

※ 岡山市「国民健康保険の葬祭費について」より

つまり、献体をしたからといって、自動的に葬祭費の対象外になるわけではないのです。

実際に支給されたケース

私たちが経験したケースをご紹介します。

ある日、都内にお住まいの方から一本のお電話をいただきました。インターネットで当社を見つけてくださったとのことです。

故人は、生前の強い意思により献体を選ばれていました。大学への搬送・解剖・火葬は大学側が行い、ご遺族は後日、ご親族だけの偲ぶ会をホテルで開きたいとお考えでした。

ただ、お仕事がお忙しく、会場選びから段取りまでご自身で進める余裕がない。「どこで、どうやって偲ぶ会を開けばいいのか、そもそもわからない」というのが最初のご相談でした。

私たちは会場の候補選びと下見を代行し、ご遺族のご希望に合う場所をご提案しました。打ち合わせはほとんどメールで進め、対面でお会いしたのは一度だけです。「お忙しい中、何度も足を運ぶのは負担になる」とのご希望に沿い、一回の対面ですべての確認を終えられるよう資料を整えてお持ちしました。

偲ぶ会といっても、ご親族が集まっての食事会です。祭壇があるわけでも、読経があるわけでもありません。それでも、故人を偲ぶ場として、温かい時間になるよう心を配りました。

後日、ご遺族に葬祭費のことをお伝えしたところ、ご本人もご存じなかった。そこで自治体に確認していただいたところ、支給対象であることがわかりました。

ご遺族からのお言葉

「教えていただき、感謝しております。」

5〜7万円という金額以上に、「誰も教えてくれなかったことを、教えてもらえた」という安心感が、ご遺族にとっては大きかったのだと感じます。

申請窓口は存在する。ただ、誰も案内してくれないだけ

なぜ、誰も教えてくれないのか

献体後の葬祭費について、積極的に案内している機関はほとんどありません。

  • 大学(献体先):あくまで解剖実習が目的であり、ご遺族の保険手続きまでは担当外
  • ホテル(会場):宴席を提供しただけであり、葬祭費の制度自体を知らない
  • 役所(自治体):申請があれば対応するが、自分から案内することはない

つまり、ご遺族が自分で気づかない限り、誰も教えてくれないという構造になっています。

私たちは葬儀社です。25年間、5万件以上の葬送の現場に携わってきました。だからこそ、「このケースなら申請できるかもしれない」と気づくことができます。

制度に詳しいのは、勉強したからではありません。現場で何度も同じ見落としを見てきたからです。

献体後に葬祭費を申請するための条件と手順

領収書一枚が、5〜7万円への扉になる

申請できる可能性がある条件

以下のすべてに該当する場合、葬祭費が支給される可能性があります。

  • 故人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた
  • 献体後に、偲ぶ会・お別れ会・仮葬儀など、何らかの弔いの場を設けた
  • その場を主催した方(喪主にあたる方)が申請する
  • 葬祭を行った日から2年以内に申請する

ただし、自治体によって判断が異なります。まずは故人が住民登録をしていた自治体の窓口に確認することが第一歩です。

申請に必要なもの(一般的な例)

  • 偲ぶ会・お別れ会の会場の領収書(宛名に喪主のフルネーム、但し書きに「故○○様の偲ぶ会として」等の記載があるもの)
  • または、葬儀社の領収書(葬儀社が関与している場合)
  • 喪主名義の振込先口座がわかるもの
  • 故人の保険証(返却済みの場合は不要な自治体もあります)
  • 喪主の本人確認書類

申請先

故人が住民登録をしていた市区町村の、国民健康保険課または後期高齢者医療の担当窓口です。

「健康保険(社会保険)」に加入していた場合は「埋葬料」

【補足】社会保険加入者の場合

故人が会社員・公務員として社会保険に加入していた場合は、「葬祭費」ではなく「埋葬料」(一律5万円)が支給されます。

埋葬料の場合、葬祭費よりも支給条件が緩やかで、葬儀を行っていなくても申請できるケースが多いとされています。お別れ会や偲ぶ会であっても問題なく受理される可能性が高いです。

申請先:故人が加入していた健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)

献体を選ばれたご遺族へ

ひとりで抱え込まなくていい

献体は、故人の崇高な意思です。

医学の未来に自らの身を捧げるその決断を、ご遺族が尊重されたこと自体が、すでに深い供養だと私は思います。

だからこそ、受け取れるはずの給付金を受け取れないまま終わってしまうのは、もったいない。

「献体したから、もう何もない」と思い込まず、まずは自治体に一本電話をしてみてください。

もしお電話が不安な場合は、私たちがサポートいたします。

葬祭費の申請サポートについて

TOKYO直葬サービスでは、葬祭費・埋葬料の申請に必要な書類の準備から郵送までをサポートしています。

→ TOKYO直葬サービス:葬祭費申請サポート(※URLは担当者にご確認ください)

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この記事について

株式会社和(なごみ)

警視庁専門葬儀社での25年間、年間3,000件、累計5万件以上の葬送の現場から生まれた知見をもとに執筆しています。おひとりさま向け終活支援「そろそろ®」、TOKYO直葬サービスを運営。

この記事は2026年3月時点の情報に基づいています。葬祭費の支給条件は自治体により異なりますので、必ず故人が住民登録をしていた自治体にご確認ください。

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