生前相談は、葬儀の段取りではない ──残りの時間の話をしに来てください

ある生前相談から、2週間後のことでした。

90歳を超えたおじいさまのご家族と、私は一度だけ、生前相談の席を持ちました。穏やかな時間でした。葬儀の話を一通りした後、私はご家族にこうお伝えしました。

「こうやって話しておくことで、生の価値がわかります。これからの残りの時間を、有意義な時間とお考えお過ごしください」

その2週間後、訃報が届きました。


穏やかな時間が、その後の時間の密度を変える。
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「段取りのため」は、半分しか正しくない

生前相談と聞くと、多くの方がこう思います。葬儀の内容を先に決めておき、いざという時の混乱を避けるための打ち合わせだ、と。

それは、半分正しい。

確かに、事前に決めておけば、慌てて高額なプランを契約してしまうことも、深夜に家族が言い争うこともありません。喪主の負担は確実に減ります。25年間、その「決めていなかったがゆえの混乱」を、私は数えきれないほど見てきました。

でも、それは生前相談の価値の半分でしかありません。

本当の価値は、もっと別のところにあります。それは──死を一度きちんと見たことで、家族の「残りの時間」が変わるということです。

漫然と過ぎていくはずだった時間が、濃度を持ち始める。「いつか」だった話が、「今日」の話になる。生前相談の本当の効能は、ここにあります。

「いつか」は来ない。だから今日、話す。

終わりを認めた人から、時間が生き返る

人は、終わりを認めた瞬間に、残りの時間を数え始めます。

「まだ大丈夫」と思っているうちは、時間は無限にあるように錯覚します。だから、大事な話を後回しにする。「いつか話せばいい」と思っているうちに、その「いつか」は来ないまま終わる。

25年間、ご遺族から最も多く聞いてきた言葉は、「もっと話しておけばよかった」です。

この後悔の正体を、長いあいだ考えてきました。そして気づいたのは、これは「時間が足りなかった」という後悔ではない、ということです。時間は、あったのです。ただ、時間があるうちに、向き合わなかった。それだけのことなのです。

死の話をすることは、縁起が悪いことだと思われています。でも、私はむしろ逆だと思っています。終わりを直視した人から順番に、残りの時間が生き返っていく。終わりがあると認めるからこそ、一日一日の重さが変わる。

だから私は、ご家族にこう伝えたのです。「これからの残りの時間を、有意義な時間とお考えお過ごしください」と。


訃報の後、私は長女の方にお会いしました。そして、こう尋ねました。

「あれから残された時間は限られていましたが、整理できましたか」

返ってきた答えは、こうでした。

「父と話せてよかった」——その言葉の重さが、すべてを語っていた。

「整理できているかは、まだわかりません。でも、有意義な時間はありました。父と話せてよかった」

私は、涙が出ました。

正直に書きます。その涙は、長女の方の言葉に感動したから流れたのではありません。あとから自分で考えてみて、わかりました。あの瞬間、父親に愛された長女と、長女に愛された父親の関係が、私自身と娘の関係に、自然と重なってしまったのだと思います。

私にも娘がいます。心から愛しています。だからこそ、「父と話せてよかった」という長女の方の言葉の奥にある、親子の情愛がそのまま伝わってきた。いつか私も、同じように送られる側になる。そのとき、私の娘は何を思うのだろう。5万件の現場を見てきても、こういう瞬間は、まだ訪れます。だからこの仕事は、いつまでも作業にはならないのだと思います。

「整理できました」という答えだったら、私は泣かなかったかもしれません。「整理はまだ。でも有意義だった」という、嘘のない答えだったからこそ、その言葉は重かった。きれいに片付いてなどいない。でも、父と話せた。その不器用な正直さが、生前相談というものの本質を、何より雄弁に語っていました。


葬儀の話ではなく、残りの時間の話を

生前相談で手に入るのは、葬儀のプランではありません。

本当に手に入るのは、「いつか話そう」を「今日話そう」に変える力です。終わりを一度見たことで、目の前の家族と過ごす時間の意味が変わる。段取りは、そのおまけにすぎません。

死に方は、選べません。いつ、どこで、どんなふうに終わるのか。それは誰にもわからない。

でも、残りの時間の使い方は、選べます。

葬儀の話を、しに来ていただかなくてもいい。まずは、残りの時間の話をしに来てください。それだけで、何かが変わるかもしれません。

残りの時間の使い方は、選べる。

残りの時間の話を、いっしょにしませんか。

そろそろ®では、葬儀の段取りだけでなく、これからの時間をどう使うかを含めた生前相談をお受けしています。はじめての方も、まずはお気軽にご相談ください。無料相談のお申し込みはこちら

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この記事を書いた人

警視庁専門葬儀社での25年間、年間3,000件、累計5万件以上の
葬送の現場から生まれた知見をもとに執筆しています。
おひとりさま向け終活支援「そろそろ®」、TOKYO直葬サービスを運営。

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