誰が相続人になるか
相続人は、本人や家族の気持ちではなく、法律で決まります。法律上の配偶者は、いつも相続人です。事実婚のパートナーは、何十年連れ添っても、法律上の相続人にはなれません。
配偶者のほかは、次の順番で決まります。上の順番の人が一人でもいれば、下の順番には回りません。
| 順番 | 相続人 | 説明 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子(子が先に亡くなっていれば孫) | いちばん先に相続人になる |
| 第2順位 | 父母(父母がいなければ祖父母) | 子も孫もいない場合 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥・姪) | 子も父母もいない場合 |
相続人が、ひとりもいないこともある甥・姪の子には、原則として相続権が回りません。配偶者も子も親も兄弟姉妹もいない方は、相続人がいないことがあります。その場合、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人が手続きを行い、残った財産は最終的に国のものになります。だからこそ、「誰に何を残すか」を遺言で決めておくことに意味があります。
代襲相続(だいしゅうそうぞく)
本来の相続人が、本人より先に亡くなっていた場合、その人の子が代わりに相続します。
- 子が先に亡くなっていた孫が相続人に。孫も亡くなっていれば、ひ孫へ
- 兄弟姉妹が先に亡くなっていた甥・姪までは代わりに相続。甥・姪の子には回らない
- 父母が先に亡くなっていた祖父母が健在なら祖父母へ(順番の繰り上がり)
- 気をつけたいこと長く会っていない親族が、相続人として現れることも
戸籍を集める
相続の手続きには、故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍がいります。戸籍は、結婚や本籍の移動、法律の改正による作り直しのたびに新しくなります。古い戸籍にだけ、前の結婚の子や認知した子が記されていることがあります。
広域交付(2024年3月から)
- できること
- 本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍を請求できる
- 請求できる人
- 本人・配偶者・父母や子などの直系の親族
- 使えない人
- 兄弟姉妹や甥・姪。本籍地ごとに請求する(郵送も可)
法定相続情報一覧図
- できること
- 集めた戸籍をもとに、法務局が相続人の一覧図の写しを交付する
- 便利なところ
- 銀行・証券・不動産の登記などで、戸籍の束の代わりに使える
- 手数料
- 無料
| 書類 | 何のために |
|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明) | 亡くなったことが記された、最後の戸籍 |
| 除籍謄本 | 全員がいなくなった戸籍。さかのぼって集める |
| 改製原戸籍 | 法律の改正で作り直される前の古い戸籍。手書きで読みにくいことも |
| 相続人の戸籍 | 相続人が今も健在であることを示す |
遺言書の種類と、選び方
遺言書は、亡くなった人の意思を、法律の力をもって実現するための書面です。遺言書が本当に必要なのは、財産が多い人ではありません。もめるかもしれない人と、法律どおりでは希望がかなわない人です。
遺言を書いておきたい方
- 子のいない夫婦(親や兄弟姉妹も相続人になる)
- 事実婚・同性のパートナーがいる
- おひとりさまで、相続人がいない
- 不動産が財産の大半
- お世話になった人や団体に残したい
| くらべる点 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作る人 | 本人が全文を手書き(財産目録はパソコン等でも可) | 公証人 |
| 証人 | いらない | 2人 |
| 保管 | 自宅、または法務局に預ける(手数料3,900円) | 公証役場(2025年10月から電子データで作成・保管) |
| 検認 | 必要(法務局に預けたものは不要) | 不要 |
| 費用 | ほぼかからない | 財産の額と受け取る人ごとに決まる手数料。財産が1億円以下なら1万3,000円を加算(2025年10月改定) |
| 気をつけること | 日付・氏名・押印などの不備で無効になることがある | 形式の不備で無効になる心配がほとんどない |
2025年10月から、公正証書の作成がデジタル化され、条件を満たせばウェブ会議で、自宅などから遺言を作れる(本人が希望し、公証人が相当と認めた場合)ようになりました。体が不自由な方や遠方の方には、選びやすくなっています。
そろそろ®の考え方。確実さを大切にしたい方には公正証書遺言を、書きながら考えたい方には法務局に預ける制度をおすすめしています。「書いたまま誰にも知られず、見つからなかった」という場面を、現場で何度も見てきたからです。
遺言書が見つかったら(検認)
自宅などで自筆の遺言書が見つかったら、開けずに家庭裁判所で検認を受けます。検認は、偽造や書き換えを防ぐために、遺言書の状態を相続人の立ち会いのもとで確かめる手続きです。遺言が有効かどうかを決めるものではありません。
勝手に開けると、過料の対象になることがある封のある遺言書を家庭裁判所の外で開けると、5万円以下の過料の対象になることがあります。公正証書遺言と、法務局に預けられていた遺言書は、検認がいりません。
遺言書があるかわからないとき
- Step 1
自宅や
貸金庫を 探す 机、仏壇、金庫、大切な書類の箱など。
- Step 2
公証役場で、
公正証書遺言が あるか 調べる 相続人などは、全国の公証役場で公正証書遺言の有無を無料で検索してもらえる(平成元年以降に作られたもの)。
- Step 3
法務局で、
預けられた 遺言書が あるか 調べる 相続人などは、遺言書が預けられているかどうかの証明(遺言書保管事実証明書)を、全国どこの法務局にでも請求できる。
遺言で遺言執行者が決められていれば、その人が遺言の内容を実現する手続き(預金の解約や名義の変更など)を進めます。おひとりさまの遺言では、執行者を決めておくことが特に大切です(第8章)。
遺留分という、最低限の取り分
遺言で「全部を〇〇に」と書かれていても、一定の相続人には、最低限受け取れる取り分が守られています。これが遺留分です。
兄弟姉妹には遺留分がない
法定相続分の半分(父母だけが相続人なら3分の1)
相続の開始と、遺留分を侵す遺贈などを知った時から。知らなくても相続開始から10年で請求できなくなる
兄弟姉妹に遺留分がない、ということ。子も親もいない方は、遺言書を一通書くだけで、財産をお世話になった人や団体に残せます。おひとりさまにとって、遺言書はとても強い道具です。
どの専門家に相談するか
| 専門家 | 得意なこと | 相談したい場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 争いの解決、交渉、調停・訴訟 | 相続人どうしで争いがある/遺留分を請求する・された |
| 司法書士 | 不動産の登記、裁判所に出す書類 | 相続登記/検認や相続放棄の書類 |
| 税理士 | 相続税・準確定申告 | 相続税がかかりそう/生前の贈与があった |
| 行政書士 | 書類の作成 | 遺産分割協議書の作成/戸籍の収集の代行 |
私たちは葬儀社なので、相続の手続きそのものはお引き受けしません。ただ、お別れの場で「相続でも困っている」と伺うことはとても多く、信頼できる専門家におつなぎしています。
よくある質問
Q相続人はどうやって確かめますか?
故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍をたどり、配偶者、子、父母、兄弟姉妹などの関係を確かめます。古い戸籍には、新しい戸籍にのっていない家族が記されていることがあるので、途切れなく集めることが大切です。
Q戸籍は、本籍地に行かないと取れませんか?
2024年3月から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を請求できる広域交付が始まりました。請求できるのは本人、配偶者、父母や子などの直系の親族です。兄弟姉妹や甥・姪は使えないので、本籍地ごとに請求します。
Q遺言書が見つかったら、開けてもいいですか?
自宅などで見つかった自筆の遺言書は、開けずに家庭裁判所で検認を受けます。封のある遺言書を家庭裁判所の外で開けると、過料の対象になることがあります。公正証書遺言と、法務局に預けられていた自筆証書遺言は、検認がいりません。
Q公正証書遺言と自筆証書遺言は、何が違いますか?
公正証書遺言は、公証人が作り、原本を公証役場が保管します。形式の不備で無効になる心配がほとんどなく、検認もいりません。自筆証書遺言は、本人が自分で書く遺言で、費用はかかりませんが、書き方を誤ると無効になることがあります。法務局に預ける制度を使うと、検認がいらなくなります。