まず、財産を調べる
通帳、証券会社からの郵便、権利証、保険証券、車検証。家にあるはずの書類を、一度ぜんぶ集めます。同時に、見落としやすいマイナスの財産も探します。全体が見えてはじめて、次の判断ができます。
プラスの財産と手がかり
- 預貯金
- 通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便
- 株式・投資信託
- 証券会社からの取引報告書
- 不動産
- 権利証(登記識別情報)・固定資産税の通知書
- 車
- 車検証・自動車税の通知
- ネットの資産
- ネット銀行・ネット証券・暗号資産。スマホやメールの履歴
マイナスの財産と手がかり
- 住宅ローン
- 返済の明細。団体信用生命保険に入っていたかも確かめる
- カードローン
- カードの明細・督促状
- 保証人になっていた債務
- 保証の契約書(本人しか知らないことが多い)
- 未払いのもの
- 税金・医療費・施設の費用・家賃の請求書
借金があるかわからないとき。信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)に開示を請求すると、故人名義の借り入れを確かめられます。相続人として請求できます(手数料はCIC 1,500円、JICC 2,177円、全国銀行個人信用情報センター 2,403円。戸籍など相続関係がわかる書類が必要)。
故人名義の不動産を一覧にできます。2026年2月から、故人が所有者として登記されている不動産を一覧にした証明書(所有不動産記録証明書)を、相続人が全国の法務局に請求できます(書面での請求は検索条件1件につき1,600円)。一覧に出るのは、指定した氏名・住所に合う、所有権の登記がある不動産だけです。登記上の氏名や住所が違うものや、登記されていない建物などは出ないことがあるので、昔の住所も条件に加え、固定資産税の納税通知書もあわせて確かめてください。
この節の根拠(確認日 2026年10月23日)
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」(請求できる人、全国の登記所で請求、手数料 書面1,600円・オンライン1,500円/1,470円、検索条件と異なる氏名・住所は抽出されない)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
相続放棄と、3か月の期限
マイナスの財産がプラスより多い、またはそのおそれがあるとき、相続人は相続放棄を選べます。プラスもマイナスも、すべて引き継がないという選択です。
自分が相続人になったことを知った時から
故人の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所
財産の調査に時間がかかるときは、期限内に家庭裁判所へ
放棄を考えているなら、してはいけないこと故人の預金を引き出して自分のために使う/故人の家や車を売る/故人あての請求を故人のお金で払う/価値のある遺品を処分する。こうしたことをすると、相続を認めた(単純承認)とみなされ、放棄できなくなることがあります。葬儀の費用に使う場合も、先に専門家へ確かめてください。
知っておきたいこと
- 限定承認プラスの範囲でだけマイナスを引き継ぐ。相続人全員でする必要があり、手続きが複雑
- 放棄は次に回る子が全員放棄すると父母へ、さらに兄弟姉妹へ。次の順番の人に伝えておく
- 何もしないと3か月が過ぎると、原則として全部を引き継いだ(単純承認)ことになる
- 放棄しても受け取れるもの受取人が決まっている生命保険金、遺族年金、未支給年金は、受け取る人自身のお金なので、相続を放棄しても受け取れる(生命保険金には相続税がかかることがあり、非課税枠は使えない)
- 相談先司法書士・弁護士。家庭裁判所の窓口でも手続きの案内がある
この節の根拠(確認日 2026年10月22日)
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」(熟慮期間は知った時から3か月、申立先は最後の住所地の家庭裁判所、印紙800円)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html - 裁判所「相続の放棄の申述」(申述人1人につき収入印紙800円、連絡用の郵便切手は裁判所ごと)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html - 国税庁タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(相続を放棄した人が受け取った死亡保険金も相続税の対象。非課税限度額は使えない。確認日 2026年10月23日)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm - 国民年金法 第19条(未支給年金は、生計を同じくしていた遺族が自己の名で請求する。確認日 2026年10月23日)
https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
遺産分割の話し合い
遺言書がないときは、相続人全員で「誰が、何を、どれだけ」受け継ぐかを話し合います(遺産分割協議)。法律の取り分は目安で、全員が合意すれば自由に分けられます。合意したら遺産分割協議書を作り、全員が署名して実印を押し、印鑑証明書を添えます。
- そのまま分ける「家はAさん、預金はBさん」。いちばんシンプル
- 代わりにお金を払う一人が家を受け継ぎ、ほかの人にお金を払う
- 売って分ける家などを売り、お金を分ける。誰も住まない実家に多い
- 共有にする一見公平でも、将来売るときに全員の同意がいる。できれば避けたい
「うちは仲がいいから大丈夫」が、いちばん危ない。具体的な金額や家の話になると、長年の気持ちがあふれてしまうことがあります。気持ちではなく、書面で残すことに意味があります。
財産ごとの名義変更
| 財産 | 手続き先 | 主に必要なもの |
|---|---|---|
| 預貯金 | 金融機関 | 遺産分割協議書か遺言書、戸籍(または法定相続情報一覧図)、印鑑証明書、通帳 |
| 株式・投資信託 | 証券会社 | 上と同じもの。受け継ぐ人の証券口座 |
| 不動産 | 法務局 | 遺産分割協議書か遺言書、戸籍、印鑑証明書、固定資産評価証明書、登記の申請書 |
| 自動車 | 運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会) | 戸籍、車検証、遺産分割協議書など。普通車と軽自動車で違うので、事前に窓口へ確認 |
| 生命保険 | 保険会社 | 保険証券、亡くなったことがわかる書類、受取人の本人確認書類 |
車は、まず車検証の「所有者」を確かめます。ローンで買った車は、所有者がディーラーや信販会社になっていることがあり、その場合は先にそちらへ連絡します。故人が所有者なら、普通車は、所有者が変わった日から15日以内に名義変更(移転登録)をするのが原則です。相続人の確定や遺産分けに時間がかかるときは、早めに運輸支局へ相談してください。自動車保険の名義変更も忘れずに。
受取人が決まっている生命保険金は、受取人のものとして扱われ、遺産分けの対象になりません(相続税の対象にはなります)。家族に確実にお金を残したいときに、使える道具です。
この節の根拠(確認日 2026年10月23日)
- 国土交通省 関東運輸局「自動車の相続による手続き」(車検証の所有者欄を確認、第三者が所有者なら相続は発生しない、必要書類は手続きの種類で異なる)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/touroku/souzoku.html - 道路運送車両法 第13条(所有者の変更があったときは、新所有者は15日以内に移転登録を申請)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185 - JAF「クルマの所有者が亡くなったら?」(ローンの場合は所有者がクレジット会社やディーラーのことがある)
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-procedure/subcategory-registration/faq013
相続登記の義務化と、空き家
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。持ち主のわからない土地が全国で増え、災害の復旧や土地の活用を妨げてきたためです。
不動産を相続したことを知った日から
正当な理由がない場合
施行前の相続も義務の対象
話し合いが長引くときは「相続人申告登記」。「自分が相続人の一人です」と法務局に申し出るだけの簡単な手続きで、ひとまず義務を果たしたことになります。
誰も住まない実家を、どうするか固定資産税は毎年かかり、管理されていない空き家は、自治体の勧告を受けると土地の税の軽減(住宅用地特例)が外れ、税が大きく増えることがあります。売る・貸す・解体する・国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度、条件あり)のどれにするか、早めに方針を決めると楽になります。
この節の根拠(確認日 2026年10月22日)
- 法務局(新潟地方法務局)「相続登記の申請義務化」(令和6年4月1日施行、3年以内、10万円以下の過料、施行前の相続は令和9年3月31日まで、相続人申告登記)
https://houmukyoku.moj.go.jp/niigata/page000001_00192.html
遺品整理という、思いの整え方
遺品整理は、ものを片付ける作業ではありません。その人が生きた証を、遺された人がどう受け止めるかを決める時間です。一気にやろうとせず、心の準備ができたところから、少しずつ。
早めにしたいこと
- 通帳・カード・契約書類を集める
- 現金・貴重品を保管する
- 冷蔵庫の中身・生もの
- ペットの世話
- 賃貸なら、明け渡しの準備
急がなくていいこと
- 衣類・寝具
- 写真・手紙・思い出の品
- 本・家具・家電
- 形見分け
遺品整理を頼むときに確かめること
そろそろ®の遺品整理。株式会社和は古物商の許可(東京都公安委員会 第303332421922号)を持ち、遺品の整理と買い取りのご相談をお受けします。家庭ごみの収集・運搬や処分には、古物商とは別に市区町村の許可が必要です。自治体のルールに沿った出し方もあわせてご相談ください。相続や税金のことは、ブレーンの司法書士・税理士などの専門家におつなぎします。海洋散骨アドバイザーも在籍しているので、ご遺骨の行き先のご相談もあわせてどうぞ。
私は25年、ご遺族が部屋の前で立ち尽くす姿を何度も見てきました。急がなくていい部屋は、急がなくていい。気持ちが追いつかないまま片付けてしまうと、あとで「あれを残しておけばよかった」と悔やむことがあります。(株式会社和 創業者)
この節の根拠(確認日 2026年10月23日)
- 環境省「一般廃棄物収集運搬業の許可」(家庭から出る一般廃棄物の収集・運搬を業として行うには、市町村長の許可が必要)
https://www.env.go.jp/info/one-stop/11/049.html - 藤沢市「ご家庭の遺品整理等に係る廃棄物の処理について」(遺品整理で出るごみは一般廃棄物。許可のない業者には運搬・処分を頼めない)
https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/kankyou-s/kurashi/gomi/wakekata/ihinseiri.html
相続税は、かかるのか
相続税の課税対象になったのは、令和6年に亡くなった方のうち10.4%、およそ10人に1人です(国税庁の集計)。多くの方は、基礎控除の範囲におさまります。ただ、都内に自宅がある方は、思ったより評価額が高くなることがあります。
例:配偶者と子2人が相続人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円。この額と比べるのは、遺産の額面ではなく、借金や葬儀費用を差し引き、一定の生前贈与などを加えた「課税価格」です。課税価格が基礎控除以下なら、原則として申告はいりません。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、申告してはじめて使えます。特例で税額がゼロになる場合も申告が必要なので、個別に確かめてください。
相続の開始を知った日の翌日から
または法定相続分までは相続税がかからない。ただし申告が必要
自宅以外に不動産がある、生前の贈与があった、事業を継ぐなど
「税金がかからないから申告しなくていい」とは限らない配偶者の税額軽減などの特例は、申告してはじめて使えます。判断に迷ったら、相続税にくわしい税理士に相談してください。
この節の根拠(確認日 2026年10月22日)
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(被相続人数 1,605,378人、課税対象被相続人数 166,730人、課税割合 10.4%)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf - 国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」(基礎控除額 3,000万円+600万円×法定相続人の数。令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm - 国税庁タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」(死亡したことを知った日の翌日から10か月以内。提出先は故人の住所地の税務署)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm - 国税庁タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」(1億6千万円か法定相続分相当額の多いほうまで)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm (3件とも確認日 2026年10月23日)
財産も遺品も、あわてずに、ひとつずつ
何から手をつけるか、誰に相談するか。まずは状況を伺うところから、一緒に整理します。遺品整理は和が自ら承ります(古物商許可あり)。司法書士・税理士などの専門家や、海洋散骨アドバイザーにもおつなぎします。
よくある質問
Q借金も相続しますか?
はい。預貯金や不動産だけでなく、借金や、故人が保証人になっていた債務も相続の対象になります。借金が多いかもしれないときは、相続の開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所で相続放棄などの手続きを考えます。
Q相続放棄はいつまでに必要ですか?
自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てます。財産の調査が間に合わないときは、期間を延ばすよう申し立てることもできます。この間に故人の財産を使ったり処分したりすると、放棄できなくなることがあるので注意してください。
Q相続登記は必ず必要ですか?
2024年4月1日から義務になりました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前の相続も対象で、その場合は2027年3月31日までが期限です。
Q遺品整理はいつ始めればよいですか?
急がなくてよいものと、早めにしたいものを分けて考えます。通帳や契約書類、貴重品、冷蔵庫の中身、賃貸の部屋の明け渡しなどは早めに。思い出の品や衣類は、気持ちの準備ができてからでかまいません。相続放棄を考えているときは、処分の前に専門家へ確かめてください。